活動報告

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江戸川区 男女共同参画条例ついてゲイの立場から考えてみた

江戸川区 男女共同参画条例ついてゲイの立場から考えてみた

2022年3月25日、江戸川区初の男女共同参画条例である「江戸川区 性の平等と多様性を尊重する社会づくり条例」(以下「条例」)が全会一致で可決され新年度4月1日より施行された。

東京23区では2002年に施行された中野区男女平等基本条例から始まり、16区目以降の導入となった。
男女共同参画の分野は、日ごとに進歩する社会情勢や市民の意識の変化が大きく、23区のうち条例を当時施行が開始されていた16区の条例を比較すると、施行日が古いほど、内容も古くなっていくのが見て取れる。今回、全会一致で可決された江戸川区の条例はある意味革新的な条文となっている。

私は2011年から同区でLGBTQの市民団体を立ち上げ、行政や区民のみなさまに対しさまざまな取り組みを続けてきた。その流れの中で当会の理事が1名、同条例の検討委員に選ばれたことも、この革新的な条例を作成する際の議論に大きく貢献していると思っている。

同条例が革新的であると私が考える大きな理由として下記3点が挙げられる。

• 「男女」という文言に代わり「すべての人」という文言が使われている。
– 他区の条例では「男女共同」や「男女平等」などの文言がタイトルや条例文中に入っているところがほとんどだが、同区の条例は「男女」という文言に代わり「すべての人」という文言が使われている。これは、男女二元論や異性愛規範から脱し、今までそれらに当てはまらない性自認や性的指向が少数派であるL G B T Qなどの性的少数者に配慮をしたものだと思われる。

• 多様なセクシュアリティの定義がまとめられている。
– 条例第二条(定義)に「性別等」は「性別(生まれた時に割り当てられた性をいう)、性的指向及び性自認をいう」と定義されており、「性自認」「性的指向」もそれぞれ定義がなされている。性自認と性的指向は性的マイノリティに限らず全ての人に当てはまる。その総称である「SOGI」の言葉の認知度は「LGBT」のそれに比べ低いが、そこを踏まえ、わかりやすく定義をされているのが印象的だ。
また、未だ多くの課題が山積する女性の権利や性別による固定的な役割分担意識とそれに基づく社会的慣行等の女性特有な課題を埋没させてはならないという意思も条文からきちんと伝わるのも特徴的だ。

• 前文は「すべての人」に読めるよう配慮され、漢字にはすべてふりかながふられ、フォントもよみやすいものとなっている。

• 禁止事項が定められている
– 他区の条例を読んでも禁止事項が定められているものはそう多くはない。その中に、L G B T Q当事者の命を奪う可能性もある「アウティング」などの問題に対する条文が盛り込まれている。
「カミングアウトの自由」は国立市の「国立市女性と男性及び多様な性の平等参画を推進する条例」にも明記されているもので「アウティング」や「カミングアウトの強要」「カミングアウトの禁止」を禁止する条文は、自殺念慮率が高いL G B T Qに関する問題等を緩和できうるものと期待する。条文に含まれる「正当な理由なく」の文言は、当事者間の訴訟などを念頭に置いたものであることをここに記しておきたい。

革新的だと思う理由を3つ挙げると言いながら、4つになってしまった。他にも紹介したい革新的な部分はあるが、いいところを挙げればキリがないほどいいものができたということが伝わればいいと思う。この条例の策定に関わった皆さんに感謝を伝えたい。

今は「最新版」とも言える「江戸川区 性の平等と多様性を尊重する社会づくり条例」も、数年経てば社会の人権意識に追い越されるのは他区の状況から推測できる。江戸川区は多方面に向け条例の理念等の認知拡大に努める義務があると考える。
この条例を廃れさせないためにも、区の責務(第五条)、区民等の責務(第六条)、教育関係者の責務(第七条)に記された「性の平等と多様性を尊重する社会を実現するための施策に協力するよう努める責務」をしっかりと推進させていくよう、私自身もしっかりと取り組んでいきたい。

この条例が施行されて終わりではなく、推進計画に基づく性の平等と多様性を尊重する社会の推進に関する施策の進捗状況を注視していく。

また、記事の内容とはまったく関係はないが、、
この条例が全会一致で可決された本会議を傍聴した帰りに立ち寄った居酒屋で私は、くしゃみをした際、自身の持っていたビールジョッキに頭をぶつけた。
記念にその傷写真もここに残しておこうと思う。

ジョッキにぶつけたおでこ

ジョッキにぶつけたおでこ

みんなも気をつけよう。特に、花粉症のこの時期は。

七崎りょうすけ

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